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割合の定義
小学校の後半の算数のなかで、最も分かりにくい単元が割合です。なぜ、分かりにくいのでしょうか。 割合には、 (割合)=(比べる量)÷(もとにする量) (比べる量)=(もとにする量)×(割合) (もとにする量)=(比べる量)÷(割合) の3つの式があります。 この3つの式は、「割合の3用法」と呼ばれて、3つの公式のように扱われていることが多いようです。ところが、前述の定義、定理、公式の考え方でみると、これを公式のように扱うことは、ふさわしくないと思っています。 (割合)=(比べる量)÷(もとにする量) これは、割合の定義です。まず、この定義をしっかり理解することが大切と思います。その上で次の2式をみると、定義から発展的に導かれる定理ということが、分かると思います。 ところが、小学校の教科書では、この3つの式が、同じように扱われ、定義について、しっかりと言及しているとは言いがたい状況です。それが「割合」を分かりにくくしている、まず第1の原因と思います。 では、「割合」とはどのようなものでしょうか。 たとえば、次の二人のどちらのシュートが上手かを評価してみましょう。 A君 ――― 10回シュートをして4回ゴールできた B君 ――― 16回シュートをして6回ゴールできた ところが、このままでは比較できません。これまでの比較は「差」に着目していましたが、この場合、シュートの回数が異なるので、単なるゴールの数の「差」では比較することはできません。 この二人を比較するには、たとえば ・ シュートの回数を10回に揃えて、そのうち何回ゴールできたか ・ 4回のゴールを決めるために何回シュートをしたか の数を比較するというように、シュートの数か、ゴールの数を揃えなくては、比較できませんでした。 ところが、「割合」という新しい数値を定義したことで、 A君のゴールの割合 ――― 4÷10=0.4 B君のゴールの割合 ――― 6÷16=0.375 となり、0.4と0.375の数値の差に着目することで、「ゴールそのものの数ではA君の方が少ないが、A君のほうが上手である」、と評価できるようになりました。 「割合」という数値の定義によって、シュートの数、ゴールの数を揃えなくても比較できるようになったのです。 これは、とてもすごいことと思います。 これまでの「比較」は、他の条件を同じにして、対象となるものの絶対的な数値の「差」に着目しました。従って、条件が違えば、絶対的な数値の「差」に意味はなくなってしまいます。ところが、ここで「絶対的な数値」を「割合」という「相対的な数値」にかえることで、再び「差」に着目して比較できるようになったわけです。 この新しい数値を定義したことで、また数の世界が広がりました。この感動をこそ子供達に味わってほしいと思っています。 子供達が、なぜ「割合」という数値が定義されたか、それによりどのように数の世界が変わったのかを理解することが、まず「割合」の概念を理解するスタートであると思っています。
by math90
| 2006-04-11 23:57
| 割合
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