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漫画教科書
久しぶりに気になるニュースが2本ありました。これらの内容について、またのちほどコメントしようと思います。


<漫画教科書:高校生向け数学2で初登場 意見付き半分削除>

 30日に公表された06年度の教科書検定で、高校生向けの数学2の教科書に本格的な「漫画教科書」が初めて登場した。しかし、ほとんどの漫画のページに検定意見が付き、出版者側は半分ほど削除することになった。「理系離れ」が指摘される中、教科書会社が試行錯誤の末に申請したが、編集者は「漫画と学習内容が結びつきにくいと判断された」と話している。
 漫画教科書は、大阪市の出版社「啓林館」が作成した。同社は数学2で3種類の教科書を制作し、漫画教科書は数学の苦手な生徒を対象にした。申請本の段階で計183ページ中のほとんどに漫画が使われていた。文部科学省も「ここまで漫画の量が多い教科書は初めてではないか」と言う。
 漫画は同級生の男女5人が1冊の教科書を拾うところから始まる。誤って教科書を破ってしまったところ、古代ギリシャの数学者アルキメデスが登場し、5人はピラミッドやヨーロッパの宮殿など異次元にタイムスリップ。宮殿にいた人物やアメリカ先住民、武士らの指導を受けながら数学の問題に挑戦し、解き方を理解すると、現代に戻って来られるストーリーだ。
 武士が登場する三角関数の章では、一定の間隔で波打つ三角関数のグラフを見て、男子生徒が「知ってるよ~、しょっちゅうやってるもん。イェーイ!」とサーフィンを始め、武士も「いぇーいでござる」とウインクしながら答えている。
 しかし、検定では「(登場人物と)学習内容との関連が不明確」との検定意見が相次ぎ、教師役と生徒のやりとりには「教師役が何を意図してこのような発言をしているのか理解しがたい」などと指摘された。
 ただ、文科省によると、教科書の中身を審査する教科用図書検定調査審議会では、学ぶきっかけとして漫画を使うという手法に肯定的な意見も出たという。文科省は「漫画を使った教科書を頭から否定するつもりはない。ただ、教科書に漫画を使う場合は学習内容に沿っていることが前提だ。この教科書は漫画だけを読んで、教科書部分を読まない可能性もある」と話す。
 一方、啓林館の編集者は「数学の苦手な生徒が思わず教科書を開きたくなるような教科書を目指し、そういった生徒が数学の世界に足を踏み入れるきっかけを作りたかった」と話している。【永井大介】   

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申請段階では「どうじゃ、わからんだろう」などとユニークな話し方をしていた教師役は修正後、すべて「です・ます」調になった=内藤絵美撮影 (毎日新聞 2007年3月30日) 




<記者の目:漫画の教科書だっていいじゃないか 永井大介>

 主に高校2年生以上が使用する06年度の教科書検定で、数学2に「漫画教科書」が申請された。漫画だけのページもあるなど、他の教科書と比べて異彩を放つ。だが、「学習内容との関連が不明確」などと多数の検定意見が付き、漫画の半分は削除された。是非はあるだろうが、あえて言いたい。漫画の教科書だっていいじゃないか、と。
 今回の検定取材で、200冊以上の教科書に目を通し、いくつもの出版社を取材した。実感したのは、進学校を意識した教科書作りが進んでいるということだ。例えば、学習指導要領を超えた内容を扱い、学力低下への懸念から02年度に導入された「発展的な学習内容」は、学力の高い生徒向けの教科書に多く盛り込まれている。
 そして、その発展的学習は記述量が大幅に増加した。ある編集者は「大学入試での出題を意識している。今後は発展的学習に何を入れるかで、教科書会社は独自の色を出せる」と説明する。
 だが、話を聞いて違和感を持たざるを得なかった。以前、池袋の街を取材した時に出会った高校生たちすべてが大学入試を希望しているわけではなかった。ダンサーやミュージシャンを目指す彼らは大学のキャンパスではなく、大きなステージに立つことを目標にしていた。
 文部科学省も「高校は多種多様であり、さまざまな生徒がいる」と認めている。人々の価値観は多様化し、今の高校生には偏差値の高い大学を入学・卒業し、一流企業に入るという高度経済成長期までの成功モデルは、机に向かう動機にならない。
 また、学力低下の問題と教科書がミスマッチを起こしているようにも思う。例えば、学力が低いとされる高校では、授業が成り立たず、教科書を終えることなく卒業することはままある。今回、こうした生徒が関心を持つと思える教科書は、申し訳ないが一冊もなかった。
 進学校でも基礎学力の低下がじわりと広がる。神奈川県内の進学校で、物理担当教諭の話に驚かされた。「ごく簡単な割り算を暗算でできない。紙に書いて計算するのはまだいい方で、携帯電話の計算機を使う生徒もいる。進学校でさえも、高校で学ぶための基礎的な学力がない生徒が入学してきている」
 検定対象の教科書は高校2年生以上を対象にしており、専門的な内容を数多く含んでいる。基礎的な学力が抜け落ちたまま高校に進学した生徒にとって、「土台」がない状況で高度な内容の授業に臨むことになる。「関心を持って聞け」ということが無理な話なのだ。
 教科書が難しくてわからない。だから勉強から遠ざかる--これでは不幸であり、せっかくの3年間がもったいないではないか。
 漫画教科書を編んだ大阪市の「啓林館」の編集者は「数学の苦手な生徒が、漫画ということで思わず教科書を開き、数学の世界に足を踏み入れるきっかけにしたかった」と狙いを説明した。教科書とは、学力の高い生徒のものでもなく、大学入試のためだけにあるものでもない。それこそ「さまざまな生徒」に、学問の面白さを気付かせるためにある。
 漫画教科書について、文科省は記者会見で「教科書を手に取った生徒が漫画だけを読み、教科書の中身を読まない可能性もある」と話した。私は漫画だけを読んだ生徒の何人かでも、数学の面白さに気付くきっかけになれば、漫画をふんだんに盛り込んだ教科書があってもいいと思う。
 高校生たちがどのような分野に進むにしても、社会に出れば、一定の知識が求められる。高校時代は関係のない分野に思える学問が、実は自分の進んだ道に密接に関係しているということもある。そういう経験をした読者も大勢おられるだろう。まずは「学問への入り口」として、教科書に関心を持ってもらうことが先決ではないだろうか。
 最近、安倍晋三首相の肝いりもあり、毎日のように「教育再生」の掛け声を聞く。「学力低下」と声高に叫ばれている。だが、学校を評価したり、教員免許を更新制度にしたとしても、多様な価値観の中で生きる21世紀の高校生たちがにわかに勉強に関心を持つとは思えない。
 学習指導要領の範囲外の記述を「発展」という形で認めるならば、教科書を開いてもらうための漫画も認めていいのではないか。さまざまな教科書の出現こそが、学力の底上げにつながる可能性を秘めていると思う。(社会部)   (毎日新聞 2007年4月3日)

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by math90 | 2007-04-05 15:28 | ニュース